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今日の激烈な情報環境の中で
美術は埋もれている。

「情報の大海」の中で美術にアクセスする人は多くはない。

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今日の余暇活動は極めて多様になっているが、その中で美術鑑賞はどのくらいなされているものなのだろう? トータルで見ると、過去1年間に美術鑑賞(テレビなどのメディアを通じた間接接触は除く)をした人は17.3%であり、経験者の年間平均回数は6.3回となる。これは多いのか少ないのか? 上図は美術鑑賞を含む余暇活動参加率を性年齢別に表わした略図なのでパターン認識していただきたい。ビデオ鑑賞、スポーツ観戦、映画、コンサート、カラオケ、テレビゲームなどといった様々な今日的楽しみが溢れる中で、美術鑑賞は(増えたとはいっても)埋もれた存在にすぎない様が読みとれるだろう。「美術の勝ち」といえそうなのは観劇くらいだ。 また、美術鑑賞はかなり女性型の余暇活動ということもいえそうだ。 source4

美術自体への関心/投資は変化がない。
しかし、他の著しい変化に比べると地盤沈下といえる。

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日本人の家庭における消費の動向を見てみよう。 図の横軸は、世帯消費に占める割合、つまり「大小」を表わし、縦軸は20年間での「増減」を表わしている。1倍ということは「変化がなかった」ということだ。 美術品を含む室内装飾品や、美術館への入館料を含む文化施設入場料が占める割合は極めて小さい。室内装飾品への支出は4倍にも増えたが、娯楽などにかけられる金額の伸びに比べると大きいとはいえない。 規模が最も大きいのは食品、最も伸びたのは映画・演劇入場料である。これは頻度の向上もあるかもしれないが、近年の高級化(高額化)を指しているのではないか。 文化施設入場料への支出が20年間でむしろ減少傾向にあるのは、「メセナの投入効果」あるいは「デパート美術館などのタダ券効果」のあらわれという意見もある。 source5

衣食住関連グッズの中でも、満足度が低いだけでなく、
重視もされていない。最も沈殿した位置にある。

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次に、生活の中でのモノに対する重視度と満足度に注目すると、ここでもアートの弱さがはっきり見てとれる。 この質問への回答者は「重視している〜していない」「満足している〜していない」をそれぞれ5段階で答えている。 自宅での食事や外出着やアクセサリー類(主に女性)、嗜好品、AV機器(主に男性)への重視&満足度は高い。つまりこれらについては充実しているということだ。 この中で美術工芸品はほとんど重視されていない、関心の向かない対象だ。 図の左下(重視も満足も低いゾーン)に沈む項目を見ると、日本人の住環境の弱さが感じられる。「エクステリア」という概念など持ちようがないということかもしれない。 source6

今日の激烈な情報環境の中で
美術は埋もれている。

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